WINDSURFING RENAISSANCE②

マリン企画 月刊Hiwind 2005年8月掲載 

ガンボーではなくカガクによってウインドをブレイクさせよう—02

スポーツにとっても重要なのはやはり、少年期の教育である。が、少子化などの問題もあり、セイリングスポーツの教育を、小中高校の運動部に負うことは期待できないであろう。しかし望みはある。地域密着型スポーツクラブの活性に。

オリンピック種目であるか否か。それはあるスポーツを評価する、ひとつの指標であろう。

野球やサッカーやバスケットボールと同じく、ウインドサーフィンも、セイリング種目のひとつとして、84年ロス五輪より正式種目となり、現在に至っている。オリンピックにはしかし、砲丸投げや、カーリング(冬季だが)などウインドサーフィン以上にマイナーなスポーツも採用されているから、そのことだけでは、本連載の──ウインドをブレイクさせるという──遠大な目標にとって有望な要素にはならない。やはり、スポーツにおいて重要なのは、クラシック音楽やバレーと同様に、少年期の教育なのである。近年の、欧州サッカーやメジャーリーグでの近年の日本人選手の活躍は、小中高の部活やクラブチームでの「教育」があってこその成果だ。

では、ウインドサーフィン部はどれくらいあるか。全国の高校に10部前後存在するのだが、私が確認したかぎり活動が活発なのは、5部であった。5部しか、というより、5部も、あると言うべきである。ウインドサーフィンはインターハイ種目になっていないため、高校の部活として行っていること自体、珍しく、すばらしく意欲的なことである。

ここからが本題である。

ではヨット部は?前回、スーパースターを作るための前提条件は、肉体的なピークを迎える前に10年間のトレーニングを積むことであると述べた。18歳で10年の経験を積むためには8歳でそのスポーツを始めなければならない。しかし小学生が日常的にウインドサーフィンするのは現実的ではない。ならば、小学生、中学生時代は学校や地元のクラブでヨットをやり、高校入学と同時にウインドサーフィンにトランスファーするのが効果的なひとつの方法ではないかと。そうヨット部は、全国の中学、高校に、どれくらい存在するのか?

まずは中学校から(日本中学校体育連盟のホームページによる)運動部のある中学校は全国で11,089校。うち最多は野球部で、9,103校=82,1%、女子バレー部、8,924校=80%、バスケット男女、サッカー、男子卓球と女子ソフトテニス部と続いていく。ヨット部。中体連による全国規模の大会がないので仕方ないのだが、男子4校、女子4校、計36名の登録者に留まっている。高校ではどうか?日本高等学校体育連盟の登録人数は全体で127万3,383名。48,194校に男子運動部が、39,364校に女子運動部がある。うちヨット部は、男子147校・855名、女子69校・400名である。1255/127383=0.0009。ヨット部員は、全高校運動部員の0.1%となる。意外に多い?

この数字は、同様にマイナーとされるカヌーやホッケー、薙刀などには勝っているが、フェンシング、ウエイトリフティング、アーチェリーなどには及ばない。メジャーどころでは、バスケットが159,657名、バレーボール121,000名、陸上90,008名。(野球やサッカーはほぼ男子に限られるので絶対数はトップクラスではない)重ねて言うが、ヨットは1255名である。

こうしたメジャーとマイナーの格差は、少子化や不況以前から存在していた。問題は、メジャーな種目はここ数年間でも微増している反面、マイナースポーツは廃部や減少が続いており、一般的傾向として、ほとんどの種目で、中学、高校ともに運動部の活動数が減少している点にある。原因としては、部活動を指導する先生の減少。学校ではなく、地域スポーツクラブや民間スポーツクラブ等で活動するパターンも増えていること。水泳、体操、サッカーなどの減少はおそらくそれである。最近の子供の資質的に、集団行動をしたり、汗をかいたり、土に汚れたりするスポーツ自体を嫌がる傾向も手伝っているのではないか。

ヨット部の数はここ数年現状維持である。この状況下で現状維持しているということは、「とてもがんばっている」ということである。また、前述の通り、5部(もの)高校ウインドサーフィン部もある。悲観することはない。

2000年9月、文部省(現文部科学省)により、「スポーツ振興基本計画」が策定されて以後、地域のスポーツ活動が見直され、「総合型地域スポーツクラブ」などの言葉が急に浮上してきた。

学校体育施設や公共スポーツ施設を拠点とする地域スポーツクラブ、民間の商業スポーツクラブなど、地域型スポーツクラブが見直され、それらを活動の場とする中高生が増えている。ヨットクラブはその一つの典型である。全国で80前後のジュニアヨットクラブが、地域と密着した活動を行っている。ハーバーや海浜の使用に際し、地域との密接なつながりが必要となるし、地域の指導者が指導を担当している。この地域型ヨットクラブの活性にウインドサーフィンが参加しない手はない。平成14年度より学習指導要領・自然体験活動のひとつとして水辺活動が導入され、自然観察や制作型プログラムとともに、「体験型」プログラムとして、セイリングスポーツが実施されている。私もボランティアで協力していたが、ウインドサーフィンをいくつかの学校で行っておりうれしい限りである。しかし、今後の学校教育にウインドサーフィン部を構え、底辺の拡大を促していく力はおそらくないし、体験止まりであろう(体験の価値は甚大ではあるが)ならば我々が考えるべきは、継続させることであり、それが可能な土壌作りである。

80年代に“Think Grobal, Act Local”というキャッチフレーズが流行した。マクロなビジョンを持って、地域で活動する。これである。これまで、メーカーやショップに負っていたウインドサーフィンの普及活動を、前述の地域スポーツクラブ、施設と積極的に連携を図っていく必要がある。ただ、それには運営、指導側の多大な自己犠牲が要求される。50歳になってもプレーニングして奇声を挙げられ、教えたり、観たりするより、自分で「やるスポーツ」度の高いウインドの場合、なかなか指導に専念していくスタイルになるのは難しい(自らを鑑みてのことですが)行政的問題もあって、計画では2010年までにすべての市町村に総合型地域スポーツクラブを構えることになっていたのであるが、サッカーくじ“toto”の売り上げが伸びず資金繰りがかなり厳しい。問題山積である。当然だ。はなから問題は少ないなんて考えちゃいない。

次号では問題解決の私案を述べたい。

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