風にリズムを感じつつ

平野貴也 博士(スポーツ健康科学) 2021年7月21日 琉球新報掲載

サーフィンが東京五輪に採用され注目を集めたが、サーフィンから派生しボードの上にカラフルな帆を立てるウインドサーフィンはセーリング種目として1984年から五輪に採用されている。世界最速は時速98.7kmで走り、10mを超すジャンプもできる上に、風のみが動力のエコなスポーツである。日本人選手の活躍が期待される100m走男子の世界記録は9秒58(時速37.6km)であるが、ウインドの場合、秒速10m(時速36km)ほどの風があれば一般の愛好者が使う用具と技術でも時速40kmを出すのはそう難しくはない。また最もエネルギー効率の良い乗り物といわれる自転車でも、時速40kmで走り続けるには半端ないエネルギー消費が必要だが、海上を気持ちよく帆走する滑走状態のウインドサーファーの消費エネルギーは、バレーボールやバトミントンをレジャーで楽しむ程度であった。省エネ過ぎてダイエットには向かないが、それくらいの体力とつらさで、動力を使わずに人類最速の世界を体験できる。

以前にトライした人は用具が重く、なかなか上達しない印象を持ったかもしれないが、今は用具が進化し、かなり扱いやすく、帆を立てるのが容易になった。とは言え、気持ちよく走るには何度も海に落ち、その度に何とも言えない悔しさと爽快感を味わい、沖縄の海の素晴らしさを再発見できるはず。

不思議なことに、一生懸命やっているとわかるはずのない風が変わるタイミングや波のリズムを感じられて大自然に受け入れられたような気分になる。58日間の長い梅雨が明け、強烈な日差しと夏至南風(カーチベイ)が夏の到来を告げている。風がよく吹くこの島でも、快晴で安定した南風が続くのはこの時期だけで、ぜひとも暑い夏に向けて、海の上で風のリズムを感じつつ、自然との一体感を楽しんで欲しい。風のリズム

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