スポーツの理想郷
17年前、マリンスポーツを指導してほしいと言われ、スポーツ健康学科ができるタイミングで名桜大学に赴任しました。 大学ではウインドサーフィン、スクーバダイビング、スキースノーボードに加え、生涯スポーツ論やコーチ学などの講義を担当しています。 私は現役のセーラーで、サーファーでもあり、マリンスポーツが非常に盛んな神奈川県から移住する時に連載していた雑誌に「沖縄をマリンスポーツのユートピア(理想郷)に」と書いたのを覚えています。 自然のパワーを感じられるスポーツが大好きで、学生たちに新たなスポーツとの出会いを創出しつつ、学生以上に講義を楽しんでおります。
レジャー・スポーツが広がり、定着する普及過程の研究を進めており、例えば、強いチームや有名な選手が育ち高度化が進むと、そのスポーツが人気となり、する人見る人が増え、用具やグッズが売れて大衆化も進みます。またする人が多くなれば、切磋琢磨してさらに強い選手が育つように高度化と大衆化の両輪が重要です。さらにスポーツツーリズムやスポーツイベントの研究からは、スポーツを一緒に応援することで地域に一体感が生まれ、選手やスポーツ自体が地域の誇りとなることもあるし、スポーツが定着する過程で人が育ち、地域への愛着や活性化に大きな影響力を発揮することがわかっています。ただスポーツ活動が人材育成やまちづくりに貢献するためには対象者に応じて実施方法や組織運営の工夫が必要であり、すべての人がスポーツを楽しめる環境づくりの研究に取り組んでいます。
ユートピアとはイギリスの思想家モアの言葉ですが、マリンスポーツだけでなく、すべてのスポーツにとって沖縄県が理想郷と呼ばれるためのヒントを探して指導の場で感じたこと、研究活動を通じて考えたことを半年間、述べていきます。
平野貴也 博士(スポーツ健康科学) 2021年7月8日 琉球新報掲載